行政書士試験の足切りは、基礎知識14題のうち6問正解して24点を取れば回避できます。この科目は令和6年度から名前が変わり、いまの正式名称は「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」です。旧称は「一般知識等」で、この名前で覚えている人が大半です。
名前は変わりましたが、24点という基準点は変わっていません。ここを1点でも下回れば、法令等でどれだけ積み上げても不合格です。逆にいえば、24点さえ確保できればこの科目の話は終わります。この記事は、その24点を最短で取りにいくための手順書です。
合格までの全体像から確認したい方は、こちらの記事からどうぞ。

結論:14題のうち6問・24点を先に確保する
やることは2つです。文章理解で解き方の型を身につけ、情報通信・個人情報保護で用語を覚える。この2つを先に固めて24点の見通しを立て、空いた時間を法令等46題に回します。基礎知識に注ぐ時間は、少なければ少ないほどいい。ただしゼロにはできない、という科目です。
試験全体の形はこうなっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法令等 | 46題 |
| 行政書士の業務に関し必要な基礎知識(旧・一般知識等) | 14題 |
| 合計 | 60題 |
| 基礎知識の基準点(足切りライン) | 24点以上 |
| 試験時間 | 午後1時〜午後4時(3時間) |
24点は6問正解にあたります。5問では届きません。「半分近く取ればいい」ではなく「6問」と数で覚えてください。試験中に迷ったとき、目標が点数ではなく問題数の形で頭に入っていると、判断が速くなります。
令和6年度から科目名が変わった|「一般知識」はどこへ行ったのか
令和6年度(2024年度)の試験から、「一般知識等」という科目名は使われていません。いまは「行政書士の業務に関し必要な基礎知識」です。書店の棚にも検索結果にもまだ旧称が並んでいるので、混乱している人が多い部分です。指しているものはおおむね同じで、そこに新しい分野が1つ加わりました。
| 出題分野 | 位置づけ |
|---|---|
| 一般知識 | 旧「一般知識等」から引き継がれた分野(政治・経済・社会など) |
| 行政書士法等行政書士業務と密接に関連する諸法令 | 令和6年度から加わった分野。ここから1題以上出題 |
| 情報通信・個人情報保護 | ここからも1題以上出題 |
| 文章理解 | 引き続き出題 |
変更点として公式に示されているのは、「行政書士法等の諸法令」と「情報通信・個人情報保護」から、それぞれ1題以上出題されるということです。逆に言えば、この2分野は「出るかどうか分からない」ではなく「出ることが決まっている」。優先順位を決めるときの土台になります。
分野ごとの出題数は公表されていません
ここは正直に書きます。「文章理解は3問」「政治・経済・社会は4〜6問」といった数字を載せている解説をよく見かけますが、これは過去の出題から推測した目安であって、公式が保証した内訳ではありません。当サイトも以前は同じ書き方をしていました。
問題数を前提にした計画は、その前提が崩れたときに丸ごと崩れます。「文章理解3問を全部取って12点、あと12点」という設計は、文章理解が2問だった年に破綻する。だからこの記事では、確定していない出題数は使いません。使うのは「14題」「24点以上」「2分野から各1題以上」の3つだけです。
旧称の「一般知識」で検索して出てくる情報が、すべて古いわけでもありません。文章理解の解き方も、個人情報保護の用語も、そのまま使えます。使えないのは「一般知識等という科目がある」という前提と、「行政書士法は出ない」という前提の2つです。
どの分野から手をつけるか|優先順位の考え方
手をつける順番は、文章理解 → 情報通信・個人情報保護 → 行政書士法等の諸法令 → 一般知識(政治・経済・社会)です。点が取りやすい順ではなく、かけた時間が点に変わりやすい順に並べています。
| 分野 | 順番 | そう決めた理由 |
|---|---|---|
| 文章理解 | 1番目 | 覚えることがない。手順を型にすれば1〜2週間で精度が上がる |
| 情報通信・個人情報保護 | 2番目 | 出てくる用語の範囲が狭い。1題以上出ることが確定している |
| 行政書士法等の諸法令 | 3番目 | 1題以上出ることが確定。条文の数が限られ、深追いする必要がない |
| 一般知識(政治・経済・社会・時事) | 4番目 | 範囲が広く、何が出るか読めない。時間あたりの見返りが小さい |
政治・経済・社会を捨てろとは言いません。足切りがある以上、「捨てても受かる」と言い切るのは危険です。ただ、6問という目標を「読めない分野」で埋めようとすると計画が立ちません。先に読める分野で土台を作り、政治・経済・社会は直前期の時事まとめを1回通読するだけにとどめる。取れたら上乗せ、という位置づけにします。
文章理解|解き方を型にすると点が安定する
文章理解は技術科目です。読書量でも国語のセンスでもありません。毎回まったく同じ順番で手を動かすと、当たり外れの幅が小さくなります。次の4手順を型にしてください。
標準手順(型をなぞるのに90〜120秒)
- 設問を先に読む(15秒)
何を聞かれているのか(主張を選ぶ/空欄を埋める/並べ替える)を確定させてから本文に入ります。本文から読み始めると、2回読むはめになります。 - 論理の目印に線を引く(30秒)
逆接=しかし・だが・ところが/因果=だから・したがって・そのため/並列=また・さらに・一方で/転換=さて・では・つまり。指示語(これ・それ・この・その)は、直前の名詞に矢印を引きます。 - 段落の役割を1字でメモ(15秒)
問題提起→説明→具体例→結論、という流れを「提・説・例・結」と余白に書くだけ。文章の骨組みが目に見えるようになります。 - 選択肢を切る(30〜60秒)
「常に」「必ず」「一切」といった極端な言い回しはまず疑う。残った選択肢が本文の言い換えになっているかを確認します。本文にないことへ勝手に一般化している選択肢は誤りです。
本番では1問5分を上限にしてください。型をなぞるのが90〜120秒、残りが迷ったときの余白です。5分を超えたら、その問題はいったん飛ばして先に進みます。文章理解で粘って法令等の時間を削るのは、いちばんもったいない負け方です。
ポイント:覚えておきたい3つの黄金則
- 逆接のあとに、著者の主張が来やすい
- 指示語は直前の名詞に紐づく。ぼんやり読み飛ばさない
- 対比が出てきたら、AとBの差分に答えがある
30秒でできるミニ演習
本文抜粋:
「行政手続の透明性が重要視されるのは、市民の納得感を高めるためだけではない。しかし、透明性の確保にはコストが伴う点に注意が必要である。」
問:著者の主張にもっとも近いものを選んでください。
A:透明性は市民の納得感のために最重要で、コストは無視できる
B:透明性は重要だが、コスト面の配慮が欠かせない
C:透明性は市民のためだけに必要で、ほかの目的はない
正解はB。手順2で「しかし」に線を引いていれば、そのあとが主張だと分かります。AとCは「無視できる」「ほかの目的はない」と言い切っており、本文より強い。極端な言い回しで切れる典型です。
復習は「根拠の言語化」まで
解いたあと、次の4つをノートに1行ずつ書きます。
- 何問中、何問正解したか
- どの目印(逆接・因果・指示語)を見落としたか
- 本文のどの文が根拠だったか(行番号でメモ)
- 間違えた理由を1行で(例:「“常に”の極端表現に引っかかった」)
「なんとなく合っていた」を残さないことが目的です。正解した問題でも根拠を口に出して説明できなければ、次に同じ問題形式が来たときに再現できません。正答率より、根拠を言えた率のほうを見てください。

情報通信・個人情報保護|30項目を暗記カードで回す
ここは1題以上出ることが公式に決まっている分野です。しかも出てくる用語の顔ぶれが毎年似ています。覚える範囲を先に閉じてしまうのが最短ルートで、範囲を閉じないまま参考書を頭から読むと、いくら時間があっても終わりません。
まず押さえたい30項目
★印から着手して、最低20項目を回してください。意味を1行で言えれば十分で、条文番号まで覚える必要はありません。
- 個人情報保護法★:個人情報・要配慮個人情報・匿名加工情報・仮名加工情報
- 安全管理措置★:組織的・人的・物理的・技術的
- 第三者提供★:本人同意・共同利用・オプトアウト
- マイナンバー★:利用範囲・収集の制限・安全管理
- Cookie・トラッキング:同意とオプトアウトの考え方
- クラウド:SaaS・PaaS・IaaS の違い
- 暗号化:共通鍵方式・公開鍵方式・ハッシュ
- 認証:パスワード・多要素認証(MFA)
- 脅威:フィッシング・マルウェア・ランサムウェア
- バックアップ:完全・差分・増分
- ネットワーク:LAN/WAN・IPアドレス・VPN
- DNS:名前解決の仕組み
- AI・ビッグデータ:言葉の意味と基本的な使われ方
- 電子署名:本人性の確認・改ざんの検知
- 電子帳簿保存:どういう制度かのイメージまで(細かい要件は不要)
1行に複数の語が並んでいる項目は、語ごとに1枚ずつカードにします。上の15行を分解すると、ちょうど30枚前後になります。
暗記カードの作り方(1枚20〜30秒で作る)
表に問い、裏に答え。それだけです。
- 表:「安全管理措置の4つの区分は?」
- 裏:「組織的・人的・物理的・技術的の4つ」
作るときのルールは3つ。1枚に1情報だけ入れる。「語句 → 意味 → 注意点1つ」の三段で書く。数字とキーワードは太字にする。手書きでもスマホのアプリでもかまいませんが、通勤中に片手で見られる形にしておくと回転数が上がります。
回し方は「1日13分」
通勤5分+昼休み5分+寝る前3分=1日13分。この配分なら、忙しい日でもゼロにはなりません。20枚を7日回せば140回の想起になります。1回にじっくり時間をかけるより、短く何度も思い出すほうが定着します。
合わなかったカードは翌日も同じ束に戻す。すらすら出たカードは3日に1回でかまいません。「今日は5枚だけ」と小さく刻むほど、続きます。
確認テスト(2問)
Q1:多要素認証(MFA)の説明としてもっとも適切なものはどれでしょう。
A:同じ種類の要素を2回続けて使うこと
B:知識・所持・生体など、種類の違う要素を組み合わせること
C:パスワードをできるだけ長くすること
→ 正解はB。「多要素」の要素とは、知っているもの(パスワード)・持っているもの(トークンやスマホ)・本人そのもの(指紋や顔)という種類のことです。
Q2:安全管理措置の区分に含まれないものはどれでしょう。
A:組織的 B:人的 C:経済的 D:技術的
→ 正解はC。組織的・人的・物理的・技術的の4つです。カードで覚えた4語がそのまま答えになります。

新しく加わった「行政書士法等の諸法令」への向き合い方
令和6年度から加わった分野で、ここから1題以上出ます。数年前に買った参考書や、古いブログ記事にはこの分野の記述がありません。抜け落ちやすいのはここです。
ただし、具体的に何が出るかまでは公式に示されていません。この記事では出題予想は書かないので、やることは1つだけです。行政書士法の条文を一度通しで読み、目次レベルで頭に入れる。それ以上は要りません。
読むときの視点は3つ。「行政書士は何をする人か」「どんな義務を負っているか」「登録や資格はどういう仕組みか」。この3つを自分の言葉で30秒ずつ説明できるようになれば、選択肢の明らかな誤りは切れます。1題のために何十時間もかける場所ではありません。使う時間は、多くても数時間で足ります。
注意:教材が制度改正に対応しているか確認を
中古やお下がりのテキストを使う場合、令和6年度より前のものだと「行政書士法等の諸法令」の章が存在しません。目次にこの分野があるかどうかで判断できます。無ければ、そこだけ別途おぎなってください。
学習スケジュール|週間メニューと直前期の60分ルーティン
基礎知識にかける時間は、平日30分・週末に少し多め。これで足ります。曜日ごとにやることを固定しておくと、「今日は何をしよう」で迷う時間が消えます。
平常期の週間メニュー(1日30〜60分)
| 曜日 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 月 | 文章理解の長文2問 → 根拠の言語化 | 40分 |
| 火 | 暗記カード20枚を2セット → 用語ミニテスト | 30分 |
| 水 | 文章理解の空欄補充3問 → 解説を読む | 35分 |
| 木 | 暗記カード回転 → 小テスト | 30分 |
| 金 | 文章理解の並べ替え2問 → 間違い直し | 30分 |
| 土 | ミニ模試(文章理解+情報通信で6問/30分) → 復習 | 50分 |
| 日 | 休む。または時事まとめを眺めるだけ | 0〜10分 |
土曜のミニ模試だけは飛ばさないでください。6問を30分で解く感覚を体に入れておくと、本番で時間配分に迷いません。日曜を休みにしているのは、続けるためです。7日連続で回そうとして3週間で止まるより、6日回して3か月続けるほうが結果は出ます。
時間は「作る」より「空ける」
平日30分が取れない、という人のほうが多いはずです。新しく時間を作るのではなく、いまある予定をどかすほうが現実的です。
- 家族に先に言っておく:「試験までの数か月、平日30分と土日2時間だけ協力してほしい」と期間を区切って頼む
- 週1回だけノー残業日を固定する:毎日は無理でも、水曜だけなら通ることが多い
- 家事を外に出す:掃除を隔週の家事代行に回すと、月に数時間が空く
- 通勤のメニューを固定する:行きは文章理解1問、帰りは暗記カード10枚
30分×6日で週3時間。8週間で24時間の差になります。まとまった時間が取れる日を待っていると、その日は来ません。
直前期の60分仕上げルーティン(本試験3週間前〜前日)
直前期は、新しい知識を入れる時期ではありません。取れるはずの問題を取りこぼさない状態にする時期です。1日60分をこう割ります。
- 文章理解のミニ模試(25分)
本番と同じ速度で解き、根拠の文を指さして確認します。ここで時間感覚を体に残します。 - 暗記カード30枚の総点検(20分)
すらすら出るかどうかだけを見ます。詰まったカードは翌日の先頭へ。 - 弱点を1テーマだけ潰す(15分)
その日に選ぶのは1つだけ。「第三者提供」「多要素認証」「行政書士の義務」など、名前で言えるレベルまで絞ります。
前日は新しいことをやらない。知らない論点を見つけても不安が増えるだけで、1日では入りません。「確実に取れる問題を確実にする」だけに集中してください。
足切りにかかる人がやっている5つのこと
| よくある失敗 | 回避策 |
|---|---|
| 「文章理解はセンスだから」と決めつけて手をつけない | 手順を型にして、復習で根拠を言語化する |
| 情報通信は範囲が広いからと後回しにする | 30項目に狭めてカードに落とす。範囲を先に閉じる |
| 政治・経済・社会を深追いして時間を吸われる | 読める分野で先に土台を作る。時事は直前に1回通読 |
| 直前に詰め込みすぎて本番で崩れる | 直前期は確実に取れる問題の底上げだけに限定する |
| 古い教材のまま、行政書士法等の諸法令を学ばずに終わる | 令和6年度以降の改正に対応した教材かを目次で確認する |
5つ目は、制度が変わった直後の年ならではの失敗です。旧称のまま情報を集めていると、この分野の存在に最後まで気づきません。
独学と通信講座、どちらで対策するか
基礎知識だけを見れば、独学で十分に間に合います。文章理解は過去問と手順があればよく、情報通信は自作カードで回せる。問題になるのは制度改正への追随です。
| 項目 | 独学 | 通信講座 |
|---|---|---|
| 費用 | 安い | かかる |
| 令和6年度の改正への対応 | 自分で調べて補う | 教材に反映されている |
| 学習の順番 | 自分で決める | カリキュラムがある |
| 向いている人 | 公式情報を自分で取りにいける人 | 調べる時間そのものが惜しい人 |
科目名ごと変わった年は、独学のコストが上がります。手元の教材が旧制度のままなら「行政書士法等の諸法令」の章が丸ごと存在せず、その穴を自分で埋めることになる。調べる時間を勉強時間から差し引いてもなお安いかで判断してください。基礎知識だけのために講座を取る必要はありませんが、法令等46題まで含めて考えると答えが変わることもあります。

よくある質問
Q:国語が苦手です。文章理解は捨てたほうがいいですか。
A:捨てないでください。文章理解は読書量ではなく手順です。接続詞と指示語に線を引くだけでも変わります。むしろ、覚えることがないので社会人にはいちばん相性のいい分野です。
Q:情報通信の項目が多すぎて手が止まります。
A:★印の4つから始めてください。個人情報保護法・安全管理措置・第三者提供・マイナンバー。この4テーマを分解するだけで10枚以上のカードになり、1週間で回せます。
Q:「一般知識」で検索して出てくる勉強法は、いまでも使えますか。
A:解き方の部分は使えます。文章理解の型も、個人情報保護の用語も変わっていません。使えないのは科目の枠組みの説明と、「行政書士法は出ない」という前提です。旧称の記事を読むときは、そこだけ読み替えてください。
Q:時事対策はどこまでやればいいですか。
A:直前期に市販の時事まとめを1回通読すれば十分です。新聞を毎日読む必要はありません。その時間は法令等46題に回したほうが、合計点は上がります。
まとめ|6問を先に確保して、この科目を終わらせる
印刷して使うチェックリスト
- 目標を「24点」ではなく「6問」で覚えた
- 使っている教材が、令和6年度以降の科目構成に対応している
- 文章理解:逆接・因果・指示語・対比に線を引いている
- 文章理解:正解の根拠を口に出して説明できる
- 文章理解:1問5分を超えたら飛ばすと決めている
- 情報通信:カード30枚を1日13分回している
- 行政書士法:条文を一度通しで読んだ
- 政治・経済・社会:時事まとめ1回通読だけに絞った
- 直前期:ミニ模試(6問/30分)を週2回やっている
この記事の要点
- 基礎知識(旧・一般知識等)は14題。6問・24点以上で足切りは回避できる
- 文章理解は4手順の型で安定させる。1問5分を上限に
- 情報通信・個人情報保護は30項目のカードを1日13分回す
- 令和6年度から加わった行政書士法等の諸法令は、条文を一度通読しておく
- 政治・経済・社会は直前の時事まとめ1回だけ。深追いしない
足切り回避は才能の問題ではなく、範囲を閉じる作業です。今日やるのは、文章理解1問と暗記カード10枚。それだけで構いません。
※科目名・出題分野・基準点は、一般財団法人行政書士試験研究センターの試験概要にもとづいています。制度は変わることがあるため、受験年度の情報は必ず公式サイトでご確認ください。
基礎知識の対策が見えたら、次は勉強時間そのものの作り方と、教材の選び方です。



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