〜40代からのリスキリングで行政書士試験に挑むあなたへ〜
はじめに|判例の理解こそ行政法攻略のカギ
行政書士試験において、行政法の出題数は20問前後と全体の約40%を占める重要科目です。その中でも、近年ますます問われているのが「判例」の理解です。
特に、40代からリスキリングで挑戦する社会人にとって、限られた学習時間で効率よく判例知識を整理し、得点源に変えることは合格への大きな一歩になります。
この記事では、行政書士試験によく出る行政法判例を厳選し、「10選」に絞って丁寧に解説します。また、判例の押さえ方や、出題傾向、学習法も紹介していきます。
行政書士試験で問われる「行政法の判例」とは?
行政書士試験では、「判例の趣旨」を正しく理解しているかどうかを問う問題が繰り返し出題されます。判例は条文の抽象性を補完し、実務的な判断基準を提供してくれるため、選択式・記述式ともに出題の頻度が高いです。
特に以下のテーマに関する判例は要注意です:
- 行政行為の取消・撤回
- 不服申立て・裁判上の救済
- 国家賠償請求
- 公務員の懲戒処分
判例問題の出題傾向と重要性
過去5年分の試験を分析すると、行政法分野の中で「判例が直接問われた問題」は年間で5問程度あります。これは全体の約1/4に相当する数値であり、得点差をつけやすい分野でもあります。
特徴:
- 細かい条文知識よりも「判例の背景と要旨」を問う
- 「正しい判決文、理由」か「誤った判決文、理由」かを見抜く問題が多い
- 短期学習者が手薄にしやすいため差がつく

判例の結論だけでなく、その理由付けや判旨の理解を問う問題が増えています。
行政法判例の出題数
判例問題は各分野にバランスよく配置され、国家賠償法、行政行為(行政事件訴訟法)、行政不服申立て(行政不服審査法)など、主要分野で毎年1問以上は判例問題が出題される傾向にあります。
- 国家賠償法:2問中、1問は高確率で判例問題。道路管理や損害賠償責任に関する判例が頻出です。
- 行政行為・行政事件訴訟法:3問中、1〜2問が判例問題となることが多い。取消訴訟や無効確認訴訟などの判例が出題されます。
- 行政不服申立て(行政不服審査法):3問中、1問程度が判例問題。審査請求や不服申立ての可否に関する判例が問われることが多いです。



各分野からまんべんなく出題されていますね。



はい。
とは言え、出題される判例はある程度決まっていますから、重要なものから押さえていきましょう。
行政法で頻出!重要判例10選とそのポイント
以下は、行政書士試験で頻出・重要とされる行政法判例10選です。
判例名 | 主なテーマ | 判旨の要点 |
---|---|---|
1. 浦安鉄抗撤去事件(最判平成3年3月8日) | 河川法の許可を受けずに設置された鉄抗の撤去と行政行為の適法性 | 法律上の根拠がなくても、緊急避難的措置としてやむを得なかったと認められる場合には、公金支出は違法とはならない |
2. 自作農創設特別措置法と民法177条(最大判昭和28年2月18日) | 農地の所有権取得と登記の対抗力について | 農地改革により取得した農地の所有権は、登記がなくても第三者に対抗できる |
3. 国税滞納処分と民法177条(最判昭和31年4月24日) | 国税滞納処分による差押えと登記の優劣 | 国税の滞納処分による差押えは、登記がなくても第三者に対抗できる |
4. 公営住宅の使用関係と信頼関係の法理(最判昭和59年12月13日) | 公営住宅の明渡請求と信頼関係破壊の有無 | 公営住宅の明渡請求について、信頼関係が破壊された場合には明渡しを認める |
5. 病院開設中止勧告に対する抗告訴訟(最判平成17年7月15日) | 行政事件訴訟法上の「処分性」判断基準 | 行政指導であっても、法的効果を有する場合には抗告訴訟の対象となる「処分性」が認められる |
6. 品川区マンション事件(最判昭和60年7月16日) | 行政指導と国家賠償責任の成否 | 行政指導によるマンション建設中止要請に応じた場合でも、行政指導が違法であれば国家賠償責任が認められる |
7. 豊中給水装置拒否事件(最判昭和56年7月16日) | 違法建築物に対する給水装置新設拒否の適法性 | 違法建築物に対する給水装置新設拒否は、裁量権の範囲を逸脱・濫用していなければ適法 |
8. 川崎民商事件(最判昭和47年11月22日) | 税務職員による質問検査権と憲法35条の関係 | 税務職員の質問検査権の行使は、憲法35条(令状主義)に違反しない |
9. 鉄道公安職印の実力行使(最大判昭和48年4月25日) | 鉄道公安職員の実力行使の適法性 | 鉄道公安職員による実力行使について、違法な身体拘束等があれば国家賠償責任が認められる |
10. 主婦連ジュース事件(最判昭和53年3月14日) | 行政不服審査法における不服申立人適格 | 行政不服申立ての利益(申立人適格)は、単なる関心や一般的利益では足りず、法律上保護された利益が必要 |
判例対策で失敗しない!初心者でも理解できる学習法
40代・初心者が苦戦しがちな判例学習には、次の方法が効果的です:
- 【ステップ1】要旨だけでなく「事案の背景」を把握する
- 【ステップ2】図表化・マインドマップで関連条文とつなげる
- 【ステップ3】過去問と照らして、どの視点で問われるかを確認
- 【ステップ4】音声教材や動画で繰り返しインプット(スキマ時間対策)



判例って難しい。
言っていることがよく分からないし。



そうですね。
最初は判例を読むのではなく、テキストに書いてある事案、判決、理由を読んで内容を理解しましょう。



慣れてきたら、判例を読んでもいいね。
事例で学ぶ!実際に出題された判例問題
過去問例(令和3年度):
「行政行為の取消について、原告適格がない者であっても訴訟提起できることがある」という記述の正誤を問う。
→ 解説:空港反対住民訴訟事件判例に基づき、「重大な権利侵害の可能性があれば原告適格あり」とされた。
→ ポイント:「原告適格は柔軟に判断される」ことを理解しておく。
40代社会人が短期間で判例を攻略する方法
社会人が判例を効率的にマスターするには、「教材選び」と「学習スタイルの最適化」が不可欠です。
推奨リソース:
- アガルート講座:行政法判例の講義が詳細&論点別に整理
- スタディング:スマホでのスキマ学習+1問1答形式で定着
- 判例集(LECや伊藤塾発行のもの):重要判例に絞られている



先ほども言いましたが、いきなり判例を自分で読むのはおすすめしません。
テキストに分かりやすくまとめてありますので、そちらを読みましょう。
まとめ|行政法の判例を制す者が試験を制す!
行政法の判例対策は、一見難解でも、構造的に理解することで得点源に変わる分野です。
40代からのリスキリングとして行政書士を目指すなら、こうした出題傾向の高いテーマを“戦略的”に攻略していくことが合格への近道です。
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