「民法が全然頭に入ってこない…」
「ボリュームが多すぎてどこから手をつければいいかわからない」
多くの受験生がつまずく理由は、実は量ではなく思考法です。
民法は私法の一般法。単発の暗記科目ではなく、条文の構造(要件→効果)を具体的事例へ当てはめる“リーガルマインド”が問われます。この記事では、その本質に正面から切り込み、今日から実行できる学習プロセスを提示します。
行政書士試験の勉強法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

行政書士試験における民法の重要性(再確認)
- 民法:9問(記述含む)で約76点(全体の約2割)。
- 記述式40点のうち約半分が民法。
→ 当てはめ力=記述力=合否に直結。
まず押さえるべき「民法の壁」の正体
民法は“ルールの暗記”ではなく“適用の技術”
- 抽象原則:信義則・権利濫用など
- 条文構造:要件(if)→効果(then)
- 思考プロセス:
- 設問が何の要件を問うているかを特定
- 事実を要件ごとに仕分け
- 当てはめ→結論
- 行政法との違い:行政法は“具体的な手続・ルールの確認”が中心になりやすいが、民法は抽象→具体の変換力が主役。
だから具体例学習が効くのは、丸暗記が楽だからではなく、抽象(条文)を具体(事実)に写像する回路を鍛えるためです。
民法を得点源に変える勉強法3選(本質版)
1.「要件→効果」分解ドリル(毎日15分)
狙い:条文を“当てはめ可能な部品”に変換する習慣化。
やり方(例:売買契約の解除・催告)
- 条文を音読しながら「主語・述語・数字・接続詞」をマーキング
- 要件リスト化(例:履行遅滞/催告/相当期間/履行なし)
- 効果(解除可能・損害賠償 等)を1行でまとめる
- ミニ事例にYes/Noで当てはめる(10問×1行回答)
テンプレ(書き写して使えます)
- 【条文番号】
- 【要件】①/②/③ …
- 【効果】
- 【頻出反射神経ワード】(例:相当期間・善意無過失・対抗要件)
- 【当てはめ1行練習】事実→該当要件→結論
体験メモ(効果実感)
「“相当期間”ってフワッとしていたけれど、要件の箱に事実を入れるだけで迷いが減る。設問の言い回しに振り回されなくなった」(40代・主婦/合格者)

2.過去問3周の“役割分担メソッド”(各周の目的を明確化)
周回数の指示だけでは不十分。周ごとに“何を鍛えるか”を固定します。
- 1周目:地図作り
- 目的:出題範囲・頻度・設問パターンの把握
- 制約:正解は気にしない/30〜40秒/肢でサッと“論点タグ”を付ける
- 産物:論点マップ(例:物権変動/代理/意思表示/債務不履行/不当利得…)
- 2周目:条文要件の照合訓練(最重要)
- 目的:誤肢が“どの要件”に引っかかっているかを条文ベースで特定
- 作業:誤肢ごとに「条文番号→該当要件→どこがNG」を1行で
- 産物:エラー台帳(弱点の条文・要件が浮き彫り)
- 3周目:説明可能性の検証
- 目的:全肢の正誤理由を“他者に口頭で言える”か
- 作業:ストップウォッチで1肢30秒説明。詰まる肢は台帳へ戻す
- 産物:本試験速度×当てはめの自動化
チェックリスト(2周目用)
- 条文番号を明記したか
- 要件のどれに不一致があるか言語化したか
- “言い換えワード”に対応できたか(例:取消→遡及効/解除→原状回復)
「2周目に“条文ベースの誤肢分析”を入れたら、3周目で“どこを見ればいいか”が見える化しました」(会社員・35歳)

3.記述式は“40〜60字の型”で攻略(週1〜2問)
ゴール:設問の要求(=要件)を抽出→効果までワンセンテンスで要約。
型(40〜60字)
【条文要件】が満たされ(or 欠け)、【効果(法律関係の帰結)】となる。※必要に応じ【抗弁/例外】に言及。
トレーニング手順(15〜20分/問)
- 設問要求の下線引き:主語・述語・数字・否定語
- 要件メモを5つ以内に圧縮(過不足は×)
- 事実を要件に配席(該当/不該当のどちらかを明確に)
- 型に落として40〜60字で清書(冗長NG・二文NG)
- 模範解答の言い回しを“動詞・名詞”単位でストック化
例(イメージ)
「催告解除」:催告→相当期間→履行なしが成立すれば、解除可。相当期間が短すぎれば不成立。
ミス撲滅ショートドリル
- 「条文の主語は誰か?」
- 「効果の対象は何(契約関係/物権・債権/損害賠償)?」
- 「数字(期間・割合・日数)は入れたか?」

実戦ミニケース(当てはめデモ)
事例:AはBに中古車を売却。引渡期限後もAが引き渡さず、Bは電話で“至急お願いします”と伝えたが、具体的期限は示さず。その後Bは解除通知。
要件→効果
- 要件:履行遅滞/催告/相当期間の経過/履行なし
- 事実配席:
- 遅滞:○(期限経過)
- 催告:△(具体的期限なし)
- 相当期間:×(判定困難)
- 履行なし:○
- 結論:催告・相当期間が不十分で解除不可の可能性高(ただし履行拒絶明示があれば催告不要例外の検討へ)
- 40〜60字答案例 引渡遅滞につき催告要。具体的期限示さず相当期間不明のため催告不備。催告不要事由の明示的拒絶もなく、解除不可。
学習ツール(自作ですぐ使える)
- 条文カード:表=条文番号・要件/裏=効果・例外
- 論点マップ:章→節→頻出条文→関連判例タグ
- 誤肢エラー台帳:問題番号/条文/要件×箇所/“正しい言い換え”
- 記述フレーズ集:効果導入「〜となる」「〜に当たる」/例外導入「ただし〜」/抗弁導入「もっとも〜」
忙しい社会人・主婦のための“当てはめ特化”スケジュール
平日(合計80〜90分想定)
- 朝15分:条文カード5枚(主語・数字確認)
- 通勤30分:過去問1セット(2周目モードで誤肢=要件特定)
- 昼休み15分:ミニケース1問の40〜60字要約
- 夜20〜30分:誤肢エラー台帳更新+1行当てはめ練習×5
休日
- 午前:過去問(3周目モードで30秒口頭説明)
- 午後:論点マップ更新+記述1問清書
- 夜:1週間の“弱要件ランキング”TOP3を条文カードで補強
配点と学習配分の“黄金比”と締切(民法にフォーカス)
- 学習配分の目安(例):民法4:行政法6
- 理由:行政法の配点・出題数が多い一方、民法の記述で差がつくため“4”を確保。
- 完成目標(本試験=例年11月上旬を想定)
- T−3か月(8月): 民法インプット1周+過去問1周(誤肢=条文要件特定を開始)
- T−2か月(9月): 過去問2周目完了+記述週2問/論点マップ固め
- T−1か月(10月): 過去問3周目で30秒口頭説明/記述仕上げ(40〜60字の精度と速度)
- 直前2週間: 弱要件ピンポイント矯正+記述テンプレの微修正のみ(新規拡張はしない)
まとめ:抽象→具体の“当てはめ技術”が民法のカギ
- 要件→効果の分解ドリルで条文を“使える形”にする
- 過去問は周回ごとに役割固定(2周目=条文要件で誤肢特定)
- 記述は40〜60字の型で“設問要求→効果”を一文に落とす
- 民法4:行政法6の配分で、民法記述で差を取りにいく
「抽象を具体へ」。この反復が、“民法は難しい”を“民法は点が取れる”に変えます。今日から、要件カード1枚と40〜60字答案1本を始めましょう。
社会人の行政書士試験の勉強法はこちらの記事をご覧ください。


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