結論:自己採点は「択一だけ」で3ゾーンに分ける
自己採点でできるのは、択一式(マークシート)の点数を出すことだけです。記述式の60点は、自分では正確に採点できません。採点基準が非公開なうえ、公式も「難易度によって合格基準点を見直すことがある」と明言しているからです。だから試験当日の夜にやるべきは、択一だけを採点して、自分がどのゾーンにいるかを見極めることに尽きます。
行政書士試験は300点満点で、うち記述式が60点。残る240点が択一(5肢択一・多肢選択・基礎知識)で、ここは解答が公表されれば1点単位で自己採点できます。つまり自己採点とは、この240点分の点数を出す作業のことです。※満点・配点は2026年7月時点で公式サイトで確認済みです。
当日の夜に採点する理由は、動き方が3ゾーンで大きく変わるからです。合格がほぼ確実な人、記述の採点を待つ人、再挑戦に向かう人。この3者では、発表までの2か月半の過ごし方がまるで違います。ゾーンを早く知るほど、次の一手に早く移れます。採点をせずに宙ぶらりんのまま2か月を過ごすのが、いちばん消耗します。
採点した240点の結果で、あなたは次の3つのゾーンのどこかに入ります。
ゾーンA:択一(240点満点)で180点以上 → 記述が0点でも合格ラインに乗る。合格を前提に動く。
ゾーンB:択一で120〜179点 → 合否は記述次第。ここが「記述待ち」の本丸。
ゾーンC:択一で120点未満 → 記述が満点でも180点に届かない。再挑戦の初動へ。
なぜ120点が境目なのかというと、記述式が60点満点だからです。択一が120点なら、記述で満点を取ってちょうど180点。それ未満だと、計算上どれだけ記述を盛っても合格基準の180点には届きません。
ただし180点は「総合点」の基準にすぎません。行政書士試験には科目ごとの足切りがあり、基礎知識(旧・一般知識等)で24点以上を取れていないと、総合180点を超えても不合格です。なお法令等科目にも122点以上という基準がありますが、こちらは総合180点に達していれば計算上必ず満たされます(基礎知識は最大56点のため)。ゾーン分けの前に、まず基礎知識14問中6問(24点)を確保できているかを必ず確認してください。
自己採点のやり方(手順)
自己採点は3ステップで終わります。問題冊子に残した自分の解答控えを用意し、予備校の解答速報と照合し、配点を当てはめるだけです。
手順1:自分の解答控えを用意する
試験中に、問題冊子へ自分が選んだ番号を書き写しておくのが前提になります。行政書士試験は問題冊子を持ち帰れるので、これさえあれば当日の夜に採点できます。書き写しは、問題番号と選んだ番号だけで十分です。時間が惜しければ、解いた直後に冊子の余白へ丸を付けておく方法でも構いません。
書き写しを忘れた場合、択一の自己採点はほぼできません。記憶だけで再現すると精度が落ちるので、その場合は無理に点数を出さず、後述のゾーンB(記述次第)として扱うのが安全です。
手順2:解答速報と照合する
公式の正解発表は後日ですが、例年、大手予備校が試験当日の夜から数日中に解答速報を公表します。ここで大事なのは、複数社を見比べることです。社によって解答が割れている問題(難問や不備が疑われる問題)は、いったん保留にします。1社だけを信じて一喜一憂しないのが、この段階のコツです。
たとえば、ある問題の解答がA社は「3」、B社は「4」と分かれていたとします。この1問(4点)は、公式発表まで「不確定な4点」として脇に置いてください。割れ問を自分に都合よく正解扱いすると、ゾーン判定が甘くなり、あとで落ち込む原因になります。
手順3:配点を当てはめる
照合できたら、正解した問題に配点を掛けて合計します。配点は次のとおりです(2026年7月時点・公式確認済み)。
| 出題形式 | 出題数 | 配点 |
|---|---|---|
| 5肢択一式(法令等) | 40問 | 1問4点(160点) |
| 多肢選択式(法令等) | 3問 | 1問8点(24点) |
| 5肢択一式(基礎知識) | 14問 | 1問4点(56点) |
| 記述式(法令等) | 3問 | 1問20点(60点)※自己採点対象外 |
この表のうち、自己採点で点数を出せるのは上の3行だけです。択一だけの満点は240点。ここがあなたが当日に出せる点数の上限になります。
合計を出すときは、先に基礎知識(56点満点)だけを集計してください。ここが24点(6問)に届いていないと、他が満点でも足切りで不合格になるからです。足切りをクリアしているか確認してから法令等の点数を足していくと、判定を誤りません。合計が出たら、先ほどの3ゾーンに当てはめます。
記述式は自己採点できるのか
記述式は「だいたいの手応え」までしか分かりません。キーワードが合っていても、書き方や文言のズレで減点される余地があり、その採点基準は受験生に公開されないからです。
記述が読めない理由は2つあります。1つは、採点基準そのものが非公開なこと。もう1つは、公式が「試験問題の難易度が過去と比べて著しく変動したと認められた場合、合格基準点を見直す補正的措置を加えることがある」と明記しているとおり、その年の全体の出来によって採点の厳しさが動く可能性があることです。※この補正的措置の記載は2026年7月時点で公式サイトにあります。
キーワード採点(答案に必要な語句が入っているかで自己採点する方法)は、目安としては役立ちます。ただし「キーワードが入っている=満点」ではありません。20点満点の問題で、部分点が8点なのか16点なのかは、開けてみるまで分からない。だから記述の自己採点は、点数として足し込まず「上振れ・下振れの幅」として持っておくのが現実的です。
たとえば、答案に狙ったキーワードを書けていても、その後の説明が条文の要件とズレていれば、満点にはなりません。逆に、多少表現が拙くても要点を外していなければ部分点が付くこともあります。この幅が事前に読めないのが、記述式のやっかいなところです。
予備校のなかには、答案を送ると記述を採点してくれるサービスもあります。プロの目で見てもらえる分、自己流のキーワード採点より精度は上がります。ただし、これも本番の採点基準とは別物です。あくまで参考のひとつで、点数を確定させるものではないと考えてください。
記述式そのものの書き方や部分点の取り方は、行政書士試験|記述式対策完全ガイドで詳しく解説しています。
【ゾーン別】結果ごとの動き方
自己採点が終わったら、ゾーンごとに動き方を変えます。待つ時間は同じでも、やるべきことは3ゾーンでまったく違います。
ゾーンA:記述抜きで180点以上 → 合格を前提に準備する
このゾーンは、記述が0点でも合格基準を満たします。数字で確認すると、択一で185点を取れていれば、記述が仮に0点でも総合185点。合格基準の180点を超えます。だからこのゾーンは、記述の出来をほとんど心配しなくてよい、いちばん気楽な位置です。
ですから合格発表を待ちながら、登録の準備を始めて構いません。行政書士は試験に受かってすぐ名乗れるわけではなく、都道府県の行政書士会への登録手続きが必要です。必要な書類や費用の全体像は、行政書士の登録の流れで先に確認しておくと、発表後の動き出しが早くなります。
準備といっても、今すぐ費用をかける必要はありません。登録に必要な書類の種類、事務所の要件、費用のおおまかな全体像を把握しておくイメージです。金額や手続きの細部は都道府県会によって異なるので、ここで数字を暗記する必要はありません。「発表後に何をどの順で進めるか」の地図を持っておくだけで、動き出しの速さが変わります。
ひとつだけ、基礎知識の足切り(24点)は再確認してください。ここを割っていると、総合が180点を超えていてもゾーンAではありません。
ゾーンB:記述次第 → 待ち方とSNSとの距離感
択一120〜179点のこのゾーンが、いちばん落ち着かない期間です。合否は記述の採点に委ねられ、自分ではもう動かせません。合格の可能性は十分にあるのに、確定しない。この宙ぶらりんが、精神的にはいちばんこたえます。
モデルケースで考えます。択一で164点だった人がいるとします(法令等の択一・多肢に基礎知識を足した合計)。合格ラインの180点まで、あと16点。記述3問のうち1問で部分点をしっかり取れれば十分に届く一方、3問とも書き負ければ届きません。まさに「記述次第」で、これがゾーンBの典型です。
この時期、SNSには「今年の記述は甘い」「いや辛い」といった採点予想があふれます。参考程度に眺めるのは自由ですが、それで一喜一憂しても、あなたの点数は1点も動きません。予想の多くは根拠のない体感で、実際の基準は発表まで誰にも分かりません。距離を置くほうが精神衛生上おすすめです。
待つだけの2か月半にしないために、できることが2つあります。1つは、翌年度に向けて学習の勘を鈍らせないこと。不合格だった場合に備え、週に数時間でも法令に触れておくと、再スタートが楽になります。もう1つは、法改正のチェックです。行政書士試験は最新の法令が問われるため、待っている間に改正情報を追っておけば、仮に再挑戦になっても無駄になりません。自分が記述で書いた答案を思い出して記録しておくと、発表後の振り返りにも使えます。
ゾーンC:届かない → 敗因分析と再挑戦の初動
択一120点未満なら、記述が満点でも180点には届きません。つらい結果ですが、ここで固まっているより、早く次に動いたほうが有利です。翌年11月の試験まで時間があるので、今から敗因を分析すれば1年をまるごと使えます。
まずやるのは、どこで落としたかの仕分けです。仕分けの目安はこうです。法令等が全体的に低いなら、インプット(理解)が足りていない可能性。基礎知識だけで足切りにかかったなら、対策の優先順位を間違えていた可能性。全科目そこそこ取れているのに総合で届かないなら、単純な演習量と過去問の反復が足りていない可能性。原因ごとに、来年の重点の置きどころが変わります。ここを曖昧にしたまま同じ勉強を繰り返すと、2年目も同じ壁に当たります。
そして、同じ教材でもう1周する前に、教材や学び方そのものを見直す選択肢もあります。独学で伸び悩んだなら通信講座へ、講座を消化しきれなかったなら独学寄りへ。自分に合うやり方を独学と通信講座どっちがいい?で判断してから2年目に入ると、同じ1年でも成果が変わってきます。
合格発表までのスケジュール
2026年度(令和8年度)の合格発表は、2027年1月27日(水)です。試験日は2026年11月8日(日)の午後1時〜午後4時。※いずれも2026年7月時点で公式サイトで確認済みです。
つまり試験から発表まで、約2か月半あります。この長さには理由があります。数万人分の記述式答案を採点するのに時間がかかるためです。この期間を自分で縮めることはできません。だからこそ、待ち方をあらかじめ決めておくことが、そのまま精神的な負担の軽さにつながります。
この間の主な流れはシンプルです。
| 時期 | 起こること | やること |
|---|---|---|
| 11月上旬(試験当日〜数日) | 予備校の解答速報が出る | 択一を自己採点し、3ゾーンに仕分け |
| 11月中旬以降 | 公式の正解が発表される | 択一の点数を確定させる |
| 翌年1月下旬 | 合格発表 | 記述込みの合否を確認する |
合否の確認方法は、行政書士試験研究センターのサイトで受験番号を照会するのが基本です。合格すると、後日、合格証が郵送で届き、そこから登録手続きに進む流れになります。発表前に登録準備を進めてよいのはゾーンAの人だけで、ゾーンB・Cの人が先走って費用をかけるのは避けたほうが無難です。発表日まで記述の点は分からないので、ゾーンBの人にとっては、この2か月半をどう過ごすかがいちばんの課題になります。
よくある質問
記述待ちの期間に、受験生からよく出る疑問をまとめます。
没問(全員正解)や補正はありますか?
過去には、問題の不備で全員を正解扱いにした例や、難易度の変動で基準点を見直した例があります。公式も「補正的措置を加えることがある」と明記しています。ただし毎年あるものではなく、事前に予測はできません。自己採点では、補正を当てにせず素点で見ておくのが安全です。
マークミスが不安です
自己採点はあくまで「解答が合っているか」の確認で、実際のマークシートがズレていないかまでは分かりません。これは発表を待つしかない部分です。とはいえ、マークずれで大きく点が変わるのは、ずらして塗り続けたような特殊なケースです。試験中に問題番号とマーク欄を指差しで確認していれば、過度に不安がる必要はありません。ゾーンAでもゾーンBでも、発表までは油断しすぎず、かといって心配しすぎもしない、くらいの構えが無難です。
記述の採点は年度で甘い・辛いがありますか?
その可能性はあります。公式が難易度に応じた補正的措置に触れているとおり、その年の全体の出来しだいで基準が動くことはあり得ます。ただし「今年は甘い」といった事前の予想は、根拠のない体感がほとんどです。予想を前提に安心してしまうのは避けてください。
自己採点と実際の点がずれることはありますか?
択一はマークミスがなければ、ほぼ一致します。ずれる主な原因は記述式です。自己採点で択一が160点でも、記述が想定より低ければ不合格、高ければ合格。この不確実さが、ゾーンBという「待ち」の期間を生んでいます。
自己採点はいつやるのがいいですか?
解答速報が出そろう試験当日の夜から翌日が目安です。ただし、疲れている当日に無理をする必要はありません。翌朝に落ち着いてやっても結果は変わりません。大事なのは、正確な解答控えと複数社の速報がそろってから採点することです。速報が1社しか出ていない段階で急いで採点すると、割れ問の判定を誤ります。
まとめ
自己採点は択一だけを採点し、3つのゾーンで動き方を決める。これが記述待ちの2か月半を消耗せずに過ごすコツです。もう一度、3ゾーンの動き方をまとめておきます。
- ゾーンA(択一で180点以上):合格を前提に登録準備。基礎知識の足切り24点だけ再確認。
- ゾーンB(択一120〜179点):合否は記述次第。SNSの採点予想とは距離を置き、翌年度の学習と法改正チェックだけ続ける。
- ゾーンC(択一120点未満):早めに敗因を仕分け。教材と学び方を見直して2年目へ。
自己採点の目的は、点数を1点単位で当てることではありません。自分が3ゾーンのどこにいるかを知り、次の行動を決めることです。択一を採点し、基礎知識の足切りを確認し、ゾーンに当てはめる。ここまでできれば、あとの判断はぐっと楽になります。
どのゾーンにいても、記述の点は発表日(2027年1月27日)まで分かりません。分からないものを気に病むより、今の自分にできる準備を進める。それが、この2か月半をいちばん楽に乗り切る方法です。

コメント